2024年は辰年です。60年ごとにめぐる干支では甲辰(きのえたつ)です。前回の甲辰は1964年。日本は高度成長に沸き、東京オリンピックが開催されました。東海道新幹線が開通した年でもあります。

さて、「龍(辰)」は空想上の生き物です。しかし、不思議なことに、東洋だけでなく西洋にも「龍(dragon)」が存在します。どちらも、トカゲや蛇などの爬虫類がベースになったような姿形をし、空を飛ぶなどの力を持っています。しかし、東洋と西洋では見た目こそ共通点はありますが、性質は大きく異なるのです。

日本の龍は中国から伝来したと言われています。中国では皇帝の象徴とされ、神性を持つものとみなされていました。また、水を司る力を持つ超自然的な存在でもありました。中国とのつながりが古くから深かった沖縄では、龍柱と呼ばれる龍をかたどった柱が見られます。では、その中国の龍はどこから来たのでしょう。インドの蛇の化身、ナーガがオリジナルのようです。仏教を介して中国に伝わり、中国で信じられていた龍と習合され、日本へとやってきました。日本にも水を司る神様が各地におり、それらと一体化したと見られています。気象を読む技術がなかった時代では、干ばつの際は雨ごいの儀式が行われました。龍神に雨をお願いするために生贄がささげられるなど、凄惨な歴史がありました。同時に龍に神秘的美しさが見出され、各地に龍神伝説が伝えられています。元ネタの存在を言われていますが、泉鏡花の「夜叉が池」など、そこにロマンティシズムを加味した物語は人気を博しました。寺社では龍の彫刻があちこちに施されていたり、神性を持つ存在でありながら身近なものと言えるかもしれません。

翻って、西洋の龍Dragonは邪悪なものとされ、火や毒の息を吐く怪物として描かれています。翼を持つトカゲのような姿です。キリスト教では悪魔と関連付けられたり、悪の象徴とされたり、こちらは散々です。今では想像上の存在ですが、かつては実在すると信じられていました。10世紀末の有名な叙事詩「ベーオウルフ」では、地中の財宝を守るものとして描かれ、黄金の盃を盗まれて激怒、火を吹いて大暴れ!このように、強欲で強い力を持ち、人々を傷つける存在として恐怖の対象であり、多くの伝承、物語では、英雄に退治されてしまう宿命です。世界屈指のヒールなのでしょう。可哀そう…。

そんな扱いを受ける西洋の龍ですが、龍を民族の象徴とする人々がいます。イギリス南西部のウェールズです。ウェールズの旗には赤い龍が描かれ、国技とも言えるラグビーのウェールズ代表は「Red Dragons」の愛称で親しまれています。

姿形にバリエーションがあったり、性質が正反対だったり。それでも、世界のあちこちに龍が存在し、多くの人々に親しまれています。日本の龍は登り龍。皆様の2024年が登り龍が天翔けるように、素晴らしい一年となるといいですね。

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